血管内塞栓術(グルー治療)について
血管内塞栓術(グルー治療)は欧米では幾つか行われておりますが、日本では保険適応で行うことができるものはVenaSeal™(ベナシール)のみです。VenaSeal™はNBCA(n-butyl-2-cyanoacrylate;ヒストアクリル)と言ういわゆる瞬間接着剤を静脈内に注入して血管を閉塞する方法です。以前より行われていた硬化療法は伏在静脈本幹に対してフォーム硬化療法として日本で行われていますが、再発率が高く治療成績は満足すべきものではありません。一方、VenaSeal™は3年の閉塞率は血管内焼灼術と遜色のないデータがあります。1)熱による血管周囲の損傷がなく、TLA麻酔(血管周囲に全長に局所麻酔を行う麻酔法)の必要がない、ストリッピング手術や血管内焼灼術で必修であった術後の圧迫療法も必要ないという利点があり、欧米では広く普及しています。
グルー治療のイメージ
血管内焼灼術との違い
血管内焼灼術と違い血管内塞栓術の場合は熱による組織の損傷の危険性がないので血管周囲に局所麻酔をする必要がありません。したがってカテーテルを入れる部分にのみ局所麻酔をするだけで手術が可能です。手術後に弾性ストッキングを着用する必要もありません。
手術をしてすぐに仕事を行うことも可能です。
血管内塞栓術のメリットとデメリット
メリット
- 局所麻酔のみで手術可能
- 手術後の弾性ストッキングが必要ない、包帯も必要なし
- TLA麻酔が必要ない(静脈全長にわたって麻酔をする必要がない)
- 手術が終了したら手術後に安静する時間が必要ないのでそのまま帰宅できる
- 手術直後より仕事が可能
デメリット
- 蛇行の強い曲がりくねっている血管には不向き
- すべてではないのですがアレルギー反応が出る可能性があるのでアレルギー体質の人には不向き
- 静脈瘤切除を同時に行うことは困難
- 長期にわたって糊が体内に残る
こんな方におすすめです
- ご高齢の方
- 弾性ストッキングがはけない方
- 手術後すぐに仕事復帰したい方
など
血管内塞栓術が不向きな方
- アレルギー体質の方
- 血管の蛇行が強い(曲がりくねっている)方
など
治療費用
3割負担の場合 | 1割負担の場合 | |
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血管内塞栓術(片足) | 約45,000円 | 約15,000円 |
標準的な治療を行った場合のおおよその自己負担額となります。
当院での診療は基本的にすべて保険診療です。
※ 薬代や弾性ストッキングの料金は含まれていません。
参考文献
1) Gibson K, Ferris B. Cyanoacrylate closure of incompetent great, small and accessory saphenous veins without the use of post-procedure compression: Initial outcomes of a post-market evaluation of the VenaSeal System(the WAVES Study)Vascular 2017;Vol.25(2):149-156